パンチラ板前
黒豆を炊き始めているというお話をしましたが、当店では寸胴と呼ばれる大きな縦長の筒状の鍋で豆を湯がきます。
たくさん入ることと、場所をとらないことが特徴です。
しかし欠点もあります。
熱の対流が難しい。大量のものを他の容器に移したりするのが困難。洗いにくい。
といった感じですが、一長一短、仕方ありません。
黒豆を炊くときに、さび釘を入れます。
さらに豆をいれ、水を入れますので、寸胴の重さはかなりのものです。
それを移動したり、水でさらしたりするのは、非常に力の要る仕事です。
夕方の営業に入ってから、ガス台が必要になり、黒豆の場所を移動することになりました。
若い子が持ち上げ、お腹より上くらいの台に置くつもりだったのですが、力が足りなくてどうしてもあがりません。
持って歩くことは可能でも、あげるのは難しいもの。
「こんなのもあげれなくなってしまった。情けない!」
と言っていますので、「あげてやるよ」と一言言って代わりました。
置いた寸胴の取っ手を持って、腰を入れようと中腰になったその瞬間、
「ビリビリ!!」
嫌な音がしました。しかしその後お尻が涼しくなったので、自分のズボンが破れたことはすぐに分かりました。
もちろんそれを見ていた板前たちにも!
私はテレながら
「ほんまかいな!破れるか?」
と言ってみんなで大笑いしたのですが、笑いすぎて力が入らず、持ち上げることもできなくなりました。
少し落ち着いて、気を取り直すと難なくあがりましたが、それからと言うもの、お客さんをしないといけなくて、ズボンを換える間がなく、仕方なくそのまま仕事をしました。
「これ、後ろから見えてる?」
とみんなに聞くと
「若干、見えております」
と正直に答えてくれました。しばらくはそのまま仕事をしたのですが、あまりに落ち着かず、手が空いたすきに交換に行きました。
ちなみに言って置きますが、私が太っているから破れたのではなく、朽ちて薄くなっていたから破れたんですよ!
寿命だったんです、寿命。
コメント