バランス
一本釣りの魚は釣りあげられるときに水圧の関係で、浮き袋が異常になり、バランスが取れなくなることがあります。
特に深いところから、一気に釣りあげられた鯛に関しては、そういう症状が、顕著に現れます。
しかしこれも技術があって、技を持つ漁師が釣りあげた場合、100メートルの深海からでもゆっくりと釣り上げ、魚を暴れささず、水圧の減少をなだらかにして、健全な状態で水面まで持ってくるのです。
しかしなお、それでもバランスを崩してしまった場合は、肛門(?)から金属の筒を入れて、浮き袋から空気を抜く作業を行ったりします。
しかしこれこそ難しいもので、ひとたび内臓を傷つけようものなら、その場で絶命してしまいます。
そうなればせっかく釣り上げた大切な高級魚も二束三文になってしまいます。
また、バランスの悪くなった魚を長い間いけすに入れておくと、バランスを取ろうと泳ぎ回るため、疲れたり、痛んだり、痩せたりしてしまいます。
これも値打ちを下げる1つの要因です。
こんな時に簡単にバランスを取らせる方法があります。
それは魚に重りをつけて、強制的にバランスを取らせ、動けなくしてしまうのです。
それをたまにしてくる漁師がいて、先日も鯛の腹ビレの間に10号ほどの鉛のおもりが、針でかけられたものが、入荷していました。
「これでうまいことなるもんだな」
とそれを見た私は、次回そういう調子の悪い鯛が入った時には自分でおもりをぶら下げてみようと考えていると、意外に早くその機会が訪れました。
本日調子の悪い鯛が入荷したのです!
態勢が定まらず、ふらふら生簀を泳ぎ回ります。
死ぬことはありませんが、こういうものは明日の朝になると驚くほど痩せていたり、痛んだりするのです。
昔使っていた船釣り用のおもりを引っ張り出して来て、釣り糸を結び鯛の腹にひっかけます。
あまり手荒にすると暴れるので、ゆっくり気付かれないようにぶら下げ、生簀に戻します。
するとどうでしょう!一時はおもりをつけたまま泳ぎ回っていたのですが、次第にバランスを取り、じっとするようになりました。
これで美味しいお造りにすることができます!
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