ある洋食の料理長のお話です。
「30年以上も前に料理の大会で海外を訪れた際、料理人たちをもてなす人たち、
そしてコックコートを着て歩いている人を見る一般市民のまなざしが、非常に敬意に満ち溢れていたのを感じたそうです。
もちろん、そこの大会に来ている人が皆、一流の料理人だと言うことも紛れもない事実ですから、そういう風に見られたのかもしれません。
一方、日本に帰ってみると、お客様とは対等にお話しができるものの、ひとたび社会的な地位のことになると、コックなどはただの水商売の一員としかみられていないのが現実でした。
それが悔しくて、料理人というれっきとした職業の地位をもっと高めたいと常に思って今まで精進されてきたそうです。
しかし、今持ってそれは成し遂げられず、いよいよ若くない。
君たち若い人たちで、是非この状況を打開してほしい」
と告げられました。
別の話になりますが、戦前は日本の料理人、それも一流と呼ばれる人たちは、社会的に一目も二目も置かれている存在であった。という話をお客様からお借りした本に書かれてあるのを見ました。
給料も非常に高く、人気商売で、さらには博識で有ったと言うから驚きます。しかも行く先々で店を繁盛させるなど。
さらに遡る話になると、曹洞宗の開祖 道元によると、人が口に入れる料理を作る僧侶は、その中でもかなり格の高い僧侶とされていたそうです。そう確か「てんぞ教訓」?なる書物に書かれていたような。
昔に比べて、また海外に比べて、日本の国の料理人がそういう立場にいられていないのは事実であり、しかしそれは我々それに携わる人間の成せる結果でもあります。
もっとしっかりと料理の勉強もし、それ以外の知識も身につけ、さらに身だしなみを整え、商売もしっかり成功させ、社会に貢献せねばなりません。
すべて高いハードルですが、先達の身に沁みるお願いですから、目指して行かねばならないと誓った次第であります。
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